3章 魔物の宴

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──月脈が静かな鼓動を打つ 降り注ぐ月光が闇を照らし仄暗い森の奥深く、立派な城を浮かび上がらせる。 城壁にそって伸び上がるツタが、侵入者を拒むように絡みつき、取り囲む夜霧は吹く風を一層冷たく凍らせて、独りの少女を震え上がらせていた… チョコレート色した肩下までの緩やかなくせ毛が淫らに跳ねる。 まだ年端もいかぬ、あどけなさの残る純真な瞳。 微かに丸みを帯た小さな白い胸。 そして、その控え目な胸に似合わず先の突起は弄ばれ過ぎて紅く色付き艶を出している… 少女の名はルナ 少女はさる高貴な伯爵様に見初められ、婚約者として城に迎えられ幸せな日々を送っていた… 「嘘よそんなの!!…」 「何が嘘だ…」 「こんなでたらめなっ…あたしのどこが幸せだなんてっ」 こんな嘘っぱちの前振りっ… ルナは幼い表情を変え必死で怒りをぶつけていた。 抗いながら牽制するルナを軽く嘲笑い、目の前に立ち塞がる若い男。 開け放った大きな窓から差し込む月の灯かりを全身に受け、通った鼻筋の影が美しい顔を半分多い隠す。 男の名はグレイ この城の主(あるじ) そして、多くの魔を統べるヴァンパイア 吸血鬼伯爵だった…
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