3章 魔物の宴

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・ パシッ── 「きゃっ…」 触れることを拒み続けるルナの躰が急に弾かれる。 頬に走る熱い痛み。 伯爵は抵抗するルナの顔を叩いた。 「高い声で騒ぐな…耳が痛い…泣くならもっと違う声で泣いてみろ」 「イヤっ──…もういやっ…ひっく…」 泣いて叫ぶルナの腕を抑え付けるとグレイはふっ、と鼻で笑う。 熱い血の通わぬ白い肌… その冷たい肌と同じように冷酷な微笑を向けると長く美しい指先を怯えるルナの前にちらつかせ、パチンと鳴らす。 「っ…!?…」 またっ… グレイは暴れるルナの動きを容易く封じ込めて感情のない笑いを浮かべた。 「どうした…もう抗わないのか?…くくっ…」 「──…っ」 「無駄な抵抗だということが漸く分かったか…」 睨み付けるルナをさもおかしそうに眺めて含み笑う。 「俺の力を存分に見てきたはずだ…お前もやっと利口になったようだな…」 身動き一つ出来ぬルナの頬に指先を添えて耳元でグレイは囁く。 “ルナ…お前は俺のフィアンセだ…” 甘く痺れる低い声。 愛しそうに頬を撫でると赤く腫れた頬に唇を押し当て傷を癒す。 たちどころに消える痛み。 それに反して浮かぶ額の逆さ十字架。 ルナの瞳から流れる涙を唇で掬うとグレイはそのままルナに唇を重ねた。
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