アンテナショップ

当然、神経が冴えきってしまって眠れなかった。

今日が祝日でよかったと思いながら、あのアンテナショップへと向かう。

やっぱりこの前と変わらない佇まいで、この前と変わらないしわしわの小さいお婆ちゃんが、また快く迎えてくれた。

お婆ちゃんが呼んでも来ないタマ江は、また何処かでサボっているようだ。

頂いたほうじ茶を飲んで気持ちを落ち着けてから、尋ねてみた。

「お婆ちゃん、昨日の夜何してた？」

先ずは当たり障りのない質問をしてみる。

「お店」

「夜中にお店開けてるの？」

「あ～い。ここでしか取り扱ってないもんで、色んな所から、よう買いに来なさるよ」

誰が？と踏み込んで聞いてみたいが、答えが恐くてまだその勇気が持てない。

そうとは知らないお婆ちゃんが、しわしわの声でのんびりと言う。

「食べてって。今うちで一番売れてるの、
このカステーラ」

おわり。