時間屋

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 その奇妙な店は、通りから外れた場所にあった。  地方に出張した仕事終わりのこと、私は興味本位で大通りからわざと外れて、横の小道を特に目的もなく進んだ。大通りを一本外れると、たちまち、そこは違った風貌を露わにする。近未来的な町並みとは違い、昔の風情を今も保ち続けている町並み。どこか、懐かしく人の心をホッとさせる何かがあった。  私がその奇妙な店を見かけたのは、懐かしさに心を揺さぶられつつ散策している最中のこと。懐かしい町並みに紛れて形が違う店がそこにあった。まるで、世界観と合っていない店は、外見からして奇妙であり違和感、異物感を懐かずにはいられなかった。それと、同時にどうして、このような店がここにあるのかが気になった。最近、建てられたという雰囲気ではない。昔から建っているかのように建物全体が日焼けしたかのように色あせていた。店先に掲げられた看板も色が剥げ、風が吹くたびに激しく揺られている。懐かしい町並みに違和感を覚えながらも、見ていると案外合っているのでは、そう錯覚しかねない。 (せっかくの出張だ)  自分に言い聞かせ、私は店に立ち寄ることにしてみた。油があまり差されていないのかキュキュと若干、動きが悪いドアノブを回し店のドアを押した。 「いらっしゃい」  店のドアを押し開けると同時に店内から声が聞こえた。店の奥、窓から差し込む夕日を灯りとして新聞を読んでいる男性が目に付いた。中肉中背のごく一般的な人だった。歳は私より少し上だろうか。頭にチラホラ見える数本の白髪が歳を感じさせた。 「すいません。ここは、何のお店ですか?店先の看板の文字が剥がれて読めなかったのですか」 「色が剥げていましたか」  年齢的に店主と思われる男性は小さく溜め息をついた。 「最近、店のことで忙しくて表をよく見ていなかったんだ」  店主はそう言うが、とても、そんな風には見えない。ゆったりとした時の中で新聞を読んでいる。忙しかったというのならば、新聞の記事に目を通していられる時間はないと思うが。 「この店は“時間屋”だよ」  少し間を置いて店主は店の名前を口にする。 「時間屋?」  店主の口から出た言葉に耳を疑って、思わず聞き返してしまった。どういうことなのか、一瞬、私は混乱してしまった。ただ、すぐに落ち着いて、
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