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「でも、あんなにモテるなら男冥利(みょうり)につきるんじゃない? すごいよ、みんな口をそろえて“カッコいい”とか“同じ学校で最高”とか。たまに羨ましがってる男子も見るし」
「そう見える?」
「ん~、どうかな。私男じゃないし。でも男っておもしろいよね。これが女子だったら、冬馬くんみたいなタイプは速攻で目の敵にされるもん」
朱音はくすくすと笑う。
「それで、月城さんはどう思ってるの? 僕のこと」
「どうって、普通だよ。……プラマイゼロってところかな」
「え、何が?」
「ああ、こっちの話」
「普通かあ……、しょっとショックだな」
冗談めかしく言う冬馬に、朱音は笑う。
――何だろうな。こいつといると、結構楽しいかも。
そのとき、昼休みを終えるチャイムが鳴る。
「あ、もうこんな時間。教科書とか取りにもどらないと」
「そうだね」
***
その後、私達は教科書を取りに教室へもどってから、ふたたび科学室を訪れた。
おもちゃのたぐいは加速度お実験道具として使用された。
ひとりの時間を終えた久遠冬馬は、また女子や男子にかまわれっぱなしになっていた。
どう見てもモテモテだろうと思うんだけど、そうじゃないのかな……。
一方で、私は宣言どおり高松をぶん殴ってやった。
それから後片づけを一人でやらせたら、気分がスッキリした。
***
――――
「ただいま」
「おっかえり~」
帰宅した朱音を、廊下をバタバタと走って、弟の蒼太がむかえた。
***
弟の蒼太だ。
来春に卒業式を控えた、11歳の小学6年生。
姉弟(きょうだい)あわせて赤と青ってことなんだけど、親父にしちゃあまあまあなセンスだと思う。
***
そこへ、両親もやってくる。
「おかえりなさい。朱音ちゃんが帰ってくるの待ってたの。ご飯できてるわよ」
「おお、やっと帰ってきたか朱音ちゃん! もう腹が減って死にそうで、危うくつまみ食いしてしまうところだったぞ!」
二人は息が合ったように、別々のことを、口をそろえて言った。
***
母の翔子(しょうこ)と父の翔太(しょうた)。
名前が一字違いというだけで意気投合し結婚にこぎつけた、近所では名の知れたおしどり夫婦。
私は二人が19歳の時にできた子供で、二人はまだ34歳と若い。
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