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目の前で女子の注目を一手に惹きつけているこの男は、入学式では新入生総代を務め、入学早々実施された実力テストでは堂々のトップに君臨した天才だ。
その運動スキルは、スポーツに興味のない女子をにわかファンにしてしまうほど高い。
去年まで幼から大一貫の超名門私立、桐生院学園にいたらしいという噂もある。
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取り囲むように廊下を占領している女子生徒達の中から、冬馬が長身を覗かせている。
――あいかわらず、すっごい人気だなあ。
そのかげで、困り顔の男子生徒達が「どいてくれよ」などと声を上げているが、まるで相手にされていない。
――ほかの男ども、かわいそう……。
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男にしては高めの、透きとおるような爽やかな声。
爽やかで人当たりのよい性格。
そこからかもし出される、どこかミステリアスな雰囲気。
キレイな黒髪。
黄金比を極めた、美しく中性的な顔。
外人っ気のあるシャープなフェイスライン。
ビー玉のような栗色の瞳。
白人のような白い肌。
それでいて、180センチをこえる高身長。
女子からの人気をほしいままにするこの男は、一方で男子からの人気も高い。
……が、あえて言おう。
私は全然好きじゃない。
なぜなら私は、シル○スタ・スタ○ーンとか! ジェ○ソン・ステ○サムとか! あんなナヨッちいのじゃなくて、筋肉ムッキムキの男が大大だあああ~い好きだからだ!
高身長イケメンは認めるが、何だあの横から見たボディーラインは! 板か? 板なのか? ひょろガリのくせして何が男だ!
男なら制服の上からでも分かる筋肉を見せてみろってんだ!
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ふと、朱音の視線に気づいた冬馬が、朱音に顔を向ける。
――おっと。
ぷいっと中庭に顔をもどす朱音。
――いかん。いつの間にか見てしまってたようだ。
ふん、とため息をついてきびすを返すと、そしらぬ顔で教室に向かう。
気づかれないように、冬馬のいる方をチラリと見る。
冬馬の横顔に夢中になっている、先ほどのクラスメイト。
――男を見てる余裕はあるんだ。
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まあ、顔は嫌いじゃないんだけどね。
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――整った顔って、無条件でいいものだし。いっそステ○サムみたいに頭丸めたらどうだろう……。
朱音は坊主頭の冬馬を想像してみる。
「…………」
そして、ないな、と頭を左右にふった。
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