◇秘密のバンパイア・フレンド◇

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「じゃ、じゃあ、私仕事あるから」  朱音はその場を立ち去ろうと、冬馬を横切る。 「待って」  朱音の足がピタリと止まる。 「重そうだね。次の授業で使うやつ?」  段ボール箱を覗きこむ冬馬。  互いの顔がぐっと近づき、ドキッ、と朱音の心臓が高鳴る。 「う、うん……」  朱音の顔が、かあっと赤くなる。 「そう言えば今朝頼まれてたね。男の日直は? 高松くんだっけ」  そのままの体勢で、冬馬が朱音に顔を向ける。 ――やばっ!  すぐに顔をそむける朱音。 「……バックレやがったから、あとでぶん殴ってやろうと思ってる」  冬馬はくすりと笑うと、身体を起こす。 「それは気の毒だったね。なら、僕が持とうか」 「え? べ、別にいいよ」 「それ、どっちの意味? いいから貸して」  そう言うと、冬馬は段ボール箱に手をのばす。  冬馬の長い腕が、段ボール箱を支えている朱音の腕と交差し、袖越しにふたりの腕が密着する。 「!?」  思わず段ボール箱から手を放してしまう朱音。  一瞬宙に浮いた段ボール箱を、 「おっと」  と、冬馬が支えなおす。 「気をつけて」 「ご、ごめん……」 「いいよ」  冬馬は段ボール箱を軽々と持ち上げる。 ――結構力あるんだ……。 「どこまでだっけ?」 「科学室。……ごめんね、持ってもらっちゃって」 「気にしないで」  優しくほほ笑む冬馬。  一瞬、その顔に見とれてしまう朱音。 ――何だ!? どうした私!?  朱音はぷるぷると頭をふって、ただよう邪気をはらう。  そんな彼女に、冬馬はとなりで「?」マークを浮かべた。
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