◇秘密のバンパイア・フレンド◇

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「どこに置けばいいの?」 「こっち」  科学室に到着すると、冬馬は朱音にうながされるまま、教師用の理科用実験台に段ボール箱を置いた。 「ありがと」  冬馬が返事代わりにニコッとほほ笑む。 「あとは私がやるから、もどっていいよ」 「手伝うよ」 「平気。中のもの、ならべとくだけだから」 「そう。じゃあ、ここにいるから、手伝ってほしいことがあったら言って」  冬馬は生徒用の実験台の椅子に腰を下ろす。 「う……、うん」 ――何だ? どういうつもり?  朱音は教師用の実験台の前に立つと、段ボール箱から教材を取り出して、机にならべる。  それは、積み木や木製の車のおもちゃなど、とても高校の授業で使いそうにないものばかり。 ――何だこれ?  朱音は「?」を浮かべながら、次々取り出していく。  その様子を黙って見守っていた冬馬が、ぽつりとつぶやく。 「こうして見てると、月城さんが先生になったみたいだ」 「何それ」  と、朱音は苦笑いを浮かべる。 「考えてみれば僕達ってさ、今日までまともに話したことなかったよね」 「そうだね」 「さっきの話の続きなんだけど、君はどうしてここへ?」 「私はとくに理由なんてないよ。進学校行っとけばとりあえず安心かなって思って、その中で近いところ選んだだけ」 「へえ。すごく余裕って感じ。月城さん頭いいんだ」 「来てみて後悔したけどね。てか、冬馬くんに“頭いい”とか言われると、もはや嫌味だね」  冬馬は、ふふっと笑う。 「冬馬くんって大変だよね。いつも女子や男子に構われてさ。ひとりでいるところなんて、初めて見たかも」 「うん。毎回逃げまわるのに苦労するよ。やっとひとりになったと思ったら、先輩が部活の勧誘来たりもするし」 「しないの? 冬馬くん運動も得意じゃん」 「僕の家、門限みたいなのあるから」 「門限……」 ――名家パねえ……。 「その点、今日は月城さんのおかげでゆっくりできてるよ。感謝しなくちゃね」  朱音は、はははっと苦笑する。 「まあ、今はしょうがない時期なんじゃない? 冬馬くん、いろいろ目立つしさ。でも、そういうのって一過性のものだから、そのうち落ちつくよ」 「僕もそれを望むよ」
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