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その奇妙な店は、いつも黒猫が座っていた。
あおば通駅からすぐ、クリスロード商店街を一本裏に入ったところにある。
店は二階で、表側から見える店名の書かれた大きな窓か、店へ上がる階段の中ほどに、いつも決まって黒猫がいた。
『黒猫珈琲』のシックな雰囲気の看板と同じ上品そうな黒猫だった。
時折かぎしっぽをくねらせて、夏場はいつも日陰で昼寝をしている。
そんな様子を反対側のチェーン店の窓際からいつも眺めていた。
「そんなに気になるなら、一度入ってみたらいいじゃん」
アイスコーヒーをずずっとすすりながら友人が呟く。
「でもちょっと入りづらいって気持ちは分かるよ。店の中の様子、外からだと分かんないし、個人経営店ぽいからなんか高そうだし」
安いドリンクバーのアイスコーヒーがからんと音を立てる。
「猫カフェでもないらしいし。ああいう店の常連ってちょっとリッチなマダムとか多そうだよな~」
「バカなこと言ってないで早く終わらせろよ。映画観に行こうって誘ったのお前だろ?」
一足先に宿題を片付けた俺は、冷めてしなびたポテトをカフェオレで流し込む。
(バイト代入ったらいってみようかな……)
ちらと外を見ると、黒猫も退屈そうにあくびをしていた。
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