3章

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 血の味が広がる。  血ってこんな味だったんだ。アディクトはいつも、こんな味のモノを飲んでるんだ。  マリアホリックを患っていない岬には、ただの鉄の味がする液体だ。  そのはずだった。  なのに、どこか甘くて切ない味がした。  ――ホリックだから。  僕は愛に飢えてしまったアディクトだから。  だから、だから。  好きな人の体は、蜜みたいに甘いんだ――…… 「……はぁ」  息を吐く。  唇が離れたその瞬間、ばっ、と笹原は岬の束縛を振り払った。 「っ」  身構えた、次の一瞬だった。
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