1章

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「……自力で?」 「そう。病は引き合うから」  彼女の言っている意味がよく分からなかった。  岬は十字架のような植物のようなモチーフ――機関の紋章がついた保冷バッグから目を上げた。 「由紀菜さん、もう一回説明してくれない?」 「何について? 私の人生? あるいはキミの従兄・中森浩輔との出会いかな?」 「違う! マリアホリックについてだよ」  噛みつく岬へ、由紀菜はからかうように笑った。 「やっぱりビンゴだったか。最近アディクトと接触したんでしょ」  岬は素直に首肯した。 「症状が進行したのもそのせいね。不思議なものよ。血と血、遺伝子同士の引力」  理系のクセにポエムだ、と口の中で言うと、聞かれたようで頬をつねられた。 「いいわ。説明いたしましょう。ただし」 「何?」 「先に、〝そのアディクト〟と何があったのか教えてくれない?」  由紀菜の顔つきは、好奇心旺盛な女子高生のようだった。
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