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「サージとか、どういう意味なの?」
「え? あ、ごめんね。サージは症状の特異的上昇の事。月が満ち欠ける二十八日周期のうち、ある一日――正確に言うとその日の宵から翌日未明にかけて、強い症状が姿を現すの」
なぜか心臓が妙な脈を打った。
「二十八日のうちの、一日だけ」
「そう。カルテによると、それ以外の日の症状は軽微。ソワフでも十分カバーできるわ。そしてまるでその対価のように――サージポイントで症状が爆発する」
きしん。
岬は胸を押さえた。由紀菜が顔色を変えたが、大丈夫だと首を振る。
三リットルも失血していることなど忘れ、岬は由紀菜に迫った。
「いつなの、その日」
由紀菜の目がカルテに落ちる。
とうに彼女は知っているはずだ。まるで最後の躊躇を示すように、じっと紙面をにらんでいる。
何でそこでためらうの。知りたい理由を言わないとだめなの?
知って僕が何をするのか、由紀菜さんにはもう分かってるんでしょう。
岬の心の声に促されたように、彼女は口を開いた。
「FullMoon――望月の晩」
その美しい単語が耳に響いた。
岬は金縛りにあったように固まった。
月満ちる晩は、今宵だった。
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