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はぁ、はぁ、と鏡也の喘ぎがそれに続く。
岬は唖然と立ち尽くしていた。
懺悔。
償い。
弟に手を出した罪への断罪。
蜜を拒む理由はあまりに幼稚で単純で、切実だった。
岬はふらりと身を返した。鏡也が顔を上げる。
「岬、どこ行くんだよ」
「……先生を探しに行く」
「っ」
腕をつかまれる。
「待てよ。放っておけって言ってんの、分からなかったのか?」
背に詰問がかかる。腕にかかる力は本気だった。
「分かるよ。そう言われてるのは分かる。先生が自ら望んで血を断ってるって事も」
肩越しに、ゆっくりと振り返る。
「理解できる。――でも、とっくに意味もない」
緑色の瞳と視線が交わる。
「鏡也だってそう言った。バカだって。今はただの自己嫌悪で自己満足だって。それなら、もういい加減に許してもらってもいいんじゃないかな」
「ゆるす……?」
「そう。――それから知ってほしいんだ」
深緑の奥へ、微笑んだ。
「このままだと、嘆くヤツが増えるばっかりだ、って」
「っ――」
鏡也が、息をのんだように見えた。
「だから、鏡也。離し」
「嫌だ」
短い拒絶を聞き留めた瞬間、強烈な力を受けた体がバランスを崩した。
「っ!」
背後のソファに倒れ込む。ギシッと大きく音が鳴り、衝撃が背を打つ。
ソファがきしみ、頭の上に影が落ちた。
「兄貴の所になんか行かせない」
岬は目を開いた。
「あいつに飲ませる血があるなら、俺がここで全部飲み尽くす」
跳ね起きかけた岬の体を、鏡也はソファに押し付けた。
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