3章

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 岬は一瞬、戸惑った。が、 「……目、とじて」  優しく言う。鏡也は上目遣いにこちらを窺ったが、すっと瞼を閉じた。  頬や唇の周りは、岬の血液で汚れている。  それを指でそっと唇をぬぐうと、彼の肩がピクリと揺れた。  とくん、と無垢な鼓動が鳴った。  ここから始めればよかったんだ。  岬は目を閉じた。  それなら、これからまた始めればいいんだ。  そして、生まれて初めて自分から、キスをした。
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