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唇が触れ合っているだけなのに、心地よかった。
時間の感覚が無くなるような、無垢で愛おしいひと時。
ゆっくりと、岬は唇を離した。
瞼を開けると、鏡也もまた目を開いた。
その淵から一筋、涙が流れ落ちる。
紅潮した頬を流れ、血液を溶かしながら輪郭を伝う。
「……学校」
ぽつりと彼は言った。
「満月の日は、いつも学校に行ってる。月見には最高だとか、バカ言って」
岬は頷いた。
また鏡也とキスしたい。
本心に願いながら、ソファを立った。
〝ありがとう〟
そう言いかけ、やめる。
「また木曜日に」
振り返った先の鏡也は、ソファに座り込んだまま、窓の向こうの夜景色を眺めていた。
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