3章

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「とうに許された罪に囚われて、偽りのシアワセを押し付けてる。自分と、鏡也に。今の方がうんと愚かなんだって、そろそろ分かってください」  岬は目を細めた。 「……でないと、僕も一生幸せにはなれない」  夜風が吹き抜けた。  満月は変わらず、遠く近い空に浮かんでいる。澄んだ光は世闇を裂き、岬の瞳から流れた涙を照らした。 「飲んでください。僕の血……」  突然、くらりと意識が傾いた。 「っ、岬くん!?」  身を崩した岬の体を笹原が抱きとめる。  強く接した彼の体。しかし心臓が飛び跳ねるには、意識と血液が足りなかった。 「ぁ……ごめんなさい。ちょっと……ふらついて」  故意無く彼の胸に体を預ける。気のせいか、鉄の匂いが漂うように感じた。 「貧血……なのか?」  心配そうな声が頭上にかかる。岬は首を振った。 「このくらい……すぐに治ります……から」  目を閉じる。闇の中で、ふわふわとした重力感が襲ってくる。  頬を誰かの手が撫でた。当然、笹原の手だ。こんなタイミングで倒れるなんて、と自分自身を呪う。  奇妙な違和感が、意識の霞を揺さぶる。  これは、嗅ぎ慣れた……血の匂い。  岬ははっと目を開いた。 「なっ!?」  凝視する。気づいた笹原が慌てて手を引っ込めたが、散ったそれを偽ることは不可能だった。
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