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「やっぱり、血が惹き合ってるのよ」
「……血が、惹き合ってる?」
「血と血、遺伝子同士の引力」
聞き覚えのある〝ポエム〟がこぼれる。
「なんとか先生が持つマリアホリックの遺伝子と、岬くんのOHGの遺伝子が共鳴し合ってるのよ。超個体的遺伝子発現増幅現象。相互利益・共存の関係にある遺伝子同士で極まれに見られる生体現象よ」
次に流れたのは専門用語満載の講義だった。
遺伝子が共鳴? 生体現象? 相互利益?
何のために……? 岬は混乱しかける頭で考えた。
遺伝子同士が生き延びるため? 互いの宿主を保存するため?
求め合うべき者同士で満たされ合うために……?
どき、と心臓が鳴った。
頭の中にそのシーンが広がった。
はだけた首筋に牙を立て、傷口からあふれる深紅の液体をすする青年。
背を抱く彼の腕――黒いシャツの袖に、苦痛と何かの感情が入り混じった表情でしがみつく自分。
「っ」
ぎゅっ、と岬は両手を握った。
「岬くん?」
不意に沈黙した岬を、由紀菜は不思議そうな顔で覗き込んだ。
なんださっきのは……。吸血鬼? 牙? そんな、何を考えているんだ僕は。
岬は小さく首を振った。そして反応を待つ由紀菜へ、唯一確実にツッコミを入れられる所を突いた。
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