1章

14/41
前へ
/192ページ
次へ
「やっぱり、血が惹き合ってるのよ」 「……血が、惹き合ってる?」 「血と血、遺伝子同士の引力」  聞き覚えのある〝ポエム〟がこぼれる。 「なんとか先生が持つマリアホリックの遺伝子と、岬くんのOHGの遺伝子が共鳴し合ってるのよ。超個体的遺伝子発現増幅現象。相互利益・共存の関係にある遺伝子同士で極まれに見られる生体現象よ」  次に流れたのは専門用語満載の講義だった。  遺伝子が共鳴? 生体現象? 相互利益?  何のために……? 岬は混乱しかける頭で考えた。  遺伝子同士が生き延びるため? 互いの宿主を保存するため?  求め合うべき者同士で満たされ合うために……?  どき、と心臓が鳴った。  頭の中にそのシーンが広がった。  はだけた首筋に牙を立て、傷口からあふれる深紅の液体をすする青年。  背を抱く彼の腕――黒いシャツの袖に、苦痛と何かの感情が入り混じった表情でしがみつく自分。 「っ」  ぎゅっ、と岬は両手を握った。 「岬くん?」  不意に沈黙した岬を、由紀菜は不思議そうな顔で覗き込んだ。  なんださっきのは……。吸血鬼? 牙? そんな、何を考えているんだ僕は。  岬は小さく首を振った。そして反応を待つ由紀菜へ、唯一確実にツッコミを入れられる所を突いた。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加