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きっぱりと由紀菜は言い切った。唖然とする岬へ、彼女は真剣な顔で告げる。
「こんな風に血液を採っておいてなんだけど、ホントは直に飲んでもらう方がいいのよ。傷口に口をつけるレベルで。血液の酸化劣化が少ない程、ネクターとしての質が上がる。新鮮な血液であればあるほど、飲む量も少量で済むのよ」
「……口を」
「そう。医療面に配慮して注射針と吸い口付きのカテーテルを使うのも手だけど、岬くんの場合はゴチャゴチャ器具を挟まず直接吸血が一番よ。どんな傷でもOHGの効果でふさがってしまうんだから」
と、由紀菜は顔を沈め、
「カンに触るいい方だったらゴメンね」
小さな声で詫びた。
「別にいいよ。そういう体なのは事実だし」
由紀菜はほっとしたように、しかしどこか憂えるように笑んだ。
「じゃあ、理解してくれた?」
「うん。要は、消費される血液の絶対量が少なくなるってことでしょう?」
「そう。だから機関にとっても確実にメリットなの」
「……」
「嫌なの? 岬くんは」
え、と顔を上げる。
「誰かのマリアになること。上手くいけば、岬くんもOHGの発作に悩まされなくて済むようになるわよ。マリアホリックとOHGは、さっきも言った通りウィンウィンの関係。血液は泉から溢れる分だけ汲まれて、彼らの命の維持のために飲まれることになる」
由紀菜は息をつき、
「浩輔もそうしたわ」
「えっ」
岬がその名に反応したのを、由紀菜は見逃さなかった。
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