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「綺麗な夕焼けだね」
足を止めて君は寂しそうに笑った。
「そうだな」
そう呟き返すと、心地よい沈黙が残った。
空を眺めたまま時が止まったかのようにピクリとも動かない君。
どれほど時が経っただろうか、夕暮れが濃くなった頃。君は僕の足元に視線を向けた。
「また、明日ね。さよなら」
優しく微笑んでそのまま背を向ける。
そんな君へ僕も、うん、またねと笑い返して手を振り返した。
小さな嘘に胸が締め付けられる。
叶わない願いだけど、それでも願ってしまう。本当にまた、会えたらいいのに......と。
悲しみを飲み込んで、精一杯の笑顔を崩さぬまま透けた手の向こう側へ。ただ、手を振り返し続ける。
振り向ことなく、明日へ歩んでく君を見送ったあと。
僕は涙を隠すかのように俯いた。
下を向くと足元に添えられている花が見えた。
それは、夕闇の風に吹かれ寂しく揺れていた。
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