西方浄土

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彼らのように家庭を持ち、ささやかな 幸福を手に入れるのもひとつの生き方だ。 だが、美奈子にはそれが自分の生き方 とは思えなかった。あなたは書ける人 ですよ。耀源老師の言葉がよみがえった。 そうなのかもしれない。それが美奈子に とって代わりのいない人生なのかも しれない。 美奈子は愛車のエンジンをかけた。重く 低い音とともに振動がダイレクトに 伝わって来る。この赤い車も美奈子に とっては代わりのない大切な存在だ。 海沿いの道を来た時とは反対方向に走る。 翠がかった青い海は今日は静かに 凪いでいる。
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