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彼女が帰ってしばらくの間、私は床にぺたんと座り込んでいた。ジャックに寄りかかる。
生暖かい感触が伝わってくる。頼れる彼氏のように、ジャックは寄りかかる私の身体を支えてくれた。
「散歩、行こうか」
私が立ち上がると、ジャックは勢いよく尻尾を振って、私を追い越して先に玄関の方へ行った。
そして私はいつものように犬を散歩させ、仕度をして出勤した。ドラッグストアの店員として働き出してから半年が経つ。早番と遅番のシフト制で、遅番は夕方三時から夜九時までだ。
別に秋彦を想って結婚しないわけではない。秋彦と別れてからも、数人の男性とつきあった。年下ともつきあったし、一回り上ともつきあった。妻のいる人と、そういう関係になったこともある。
ただ何となく、結婚しないまま三十歳を過ぎ、半ばになっただけの話だ。
ただ、何となく。
高校時代学校をサボった理由と、たいして変わらない。結婚、離婚。そういうものの関係のない場所で、生きていたいと思っているだけのことだ。
彼を今も想っているなんて、冗談じゃない…。
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