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 高校時代、何となく学校をサボったことが何回もあった。とくに理由はなかった。私にはそういうところがあり、ときどき親が呼び出されて注意を受けたが、直らなかった。  ただ何となく、何もせずに日常から離れたいときがあったのだ。だからといって、家庭環境が特別悪かったわけではないし、学校でいじめられていたわけでもなかった。私の、癖のようなものだったのだと今にして思う。  進学校というわけではなかった。生徒の半分以上の進路は就職だったし、進学も女生徒の短大や専門学校が大半だった。  私はといえば、進学するつもりもなかったし、地元の小さな企業あたりに就職できればいいと考えていたから、気楽といえば気楽な高校生活だったかもしれない。  秋彦とは一、二年生のときに同じクラスだった。中学は別々で、彼は隣町から列車で通ってきていた。  学校の裏手を十分ほど歩くと、町を見渡せる高台の公園に出る。小さな町だから、町のほとんどが見え、海も見える。海沿いの国道を見ていれば、いつも決まった時間に通って行く車もわかる。    あ、見えた見えた。今日も通って行った。ただそれだけのことに、満足感を覚えたりした。その車がどこへ何をしに行く車かなど、どうでもよかった。  私はただ、そんな田舎の景色を見るのが好きだっただけだ。何の変哲もない毎日を象徴しているような静かな町のたたずまいを、少し遠くから眺めているのが好きだったのだ。  町は毎日変わらぬ顔を見せ、私たちを包んでいる。それを感じられればよかった。安心を得られるようで心が落ち着いた。
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