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私は結局四時間目が終わった頃合を見計らって登校した。
図書館にでも行ってから家に帰ろうかと思ったが、友達に借りた本を持ってきていたことを思い出し、先生からまたお小言を言われることを覚悟で学校に行った。
私が登校しても、秋彦は私を見るでもなく、もちろん話しかけてくるわけでもなく、私の方も、さっきお菓子をもらった礼を言うでもなく、互いに淡々としていた。
それからもときどき、私たちは示し合わせたわけでもなく、公園で一緒の時を過ごした。
たいてい秋彦はスナック菓子を持っており、それをボリボリやりながら時間をつぶしていたに過ぎなかったが、夏休みが過ぎた頃には不思議な連帯感のようなものが生じていた。
この頃はお互いのことを「サボリ仲間」だと、秋彦の方も思っていたようだ。
チューリップ、紫陽花(あじさい)、水仙、パンジー…公園の花壇には様々な花が植えられてあった。野生種と思われる躑躅(つつじ)も春の見頃時期には目を楽しませてくれた。
高校より数キロ東の方に小学校があり、春には桜が咲いた。西のT山の、雪が次第に消えていく様子、緑が段々と色濃くなっていく様子、町の自然が、私は好きだった。
「空を、飛びたいって思わないか?」
ある日、珍しく秋彦が話しかけてきた。突拍子もない質問に、私は一瞬、頭が真っ白になった。
私は横に座っている彼の顔を見た。
彼は真っ直ぐ町を見て、それからふいに顔を上げ、
「なあ、空、飛びてえな」
としみじみ言った。
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