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「怒った?」  秋彦が私に訊ねる。  私は大きくかぶりを振った。けれど、恥ずかしくて秋彦の方を振り向くことが出来なかった。 「ごめん…」 「どうして?」 「だって、ごめんね。びっくりさせて」 「どうして、謝るの?」  ようやく、私は彼を振り向いた。好きなら、いい。好きな女の子にキスをして謝るのはおかしいし、受け容れた私は、そのときすでに彼を好きになっていたのだから。  情けない表情で私を見上げる彼に、私は手を差し伸べた。私の手を取り、彼が立ち上がる。  私たちは手をつなぎ、公園内を歩いた。  長閑な町の、長閑な公園で、私たちは一つの絵のように、ゆっくりと景色に同化されていく。  ほんわかと香りたつような時間を、若い私たちは過ごしていた。  その日が彼の誕生日だったことを、私は後から知った。十七歳の記念に、お前とキスをしたかったんだと彼が言った。私は、ただ単純に嬉しかった。  私たちは学校でも堂々と一緒にいるようになった。休み時間にお喋りしたり、どちらかが掃除当番だったら待って一緒に帰ったり。  多分、あんまりべったりしていたのだと思う。呆れた担任に、職員室に呼ばれ注意を受けたこともある。  三年生になって二人がバラバラのクラスになると、秋彦は先生の陰謀だと言って怒っていた。
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