プロローグ

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 芸能ネタの好きな房子が、テレビをつけろと言う。ちょうど、ワイドショーが入る時間帯だった。テレビに映し出されたのは有名大物俳優と人気女優。離婚の話題がメディアを騒がせていた。 「この二人、呆気なく別れちゃったね」 「派手に結婚式して、一年も経ってないよ」 「そうよ。いいんじゃない? ああいう人たちはお金にも相手にも困らないから、我慢する必要なんてないもの」  房子が暗い声を出した。 「あれぇ? まるであんたがダンナに我慢してるって言い方だね」 「そりゃ、そうよ。結婚なんてさ、生まれも育ちも違う赤の他人が一つ屋根の下に暮らすんだもの。お互い引くところは引いて、妥協するところは妥協して、我慢するところは我慢しなくちゃ、長くなんか一緒にいられないでしょ」 「いつものろけてるくせに」 「それはそうだよ。ラブラブだもの。でもね、ああ、この人、こういう面を持ってるんだなとか、こういう考え方なんだなってさ、そうやって相手が違う人間だってことは常に踏まえてるつもりでもさ、それでも肩が凝るときってあるの。恋人同士のときには凝らなかった肩が凝ったりするんだから。いくらラブラブでも、そういうもんよ」 「ふーん」  私は気のない返事をした。 「ふーん、って。まるで我関せずね。結婚って、いいものよ。ねえ、美保、あんたもしてみりゃいいのに」 「言ってること、矛盾してない?」 「してない、してない。それでも一緒にいられることが素晴しいって、言いたいの。わかる?」 「さあ?」 「さあ、じゃなくてさ」
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