第1章

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自動ドアが開き、幼い女の子が泣きながら店の中に入ってくる。 「エーンエンエンおがあざ――ん」 女の子に女性店員が駆け寄った。 「どうしたの? 大丈夫? お母さんとはぐれたの?」 女の子は優しく店員に話しかけられて、泣きながら話しだす。 「おがあざんとね、ヒック、おててを、おててをつないでいたのに、グス、おがあざんが、おがあざんがいないの――、ヒック、いなくなっちゃったの、おがあざ――んエ――ン」 女の子の顔と手足それに服は、母親を探している間にあちこちで転んだのか、泥まみれだった。 「分かった! 小母さんも一緒にお母さんを探してあげる」 「グス、ほ、ほんとに? グスグス、いっしょにさがしてくれるの? グス」 「本当に一緒に探してあげる。 でも、顔やお洋服が泥で汚れていて、あなたのお母さんがあなたに気が付かないかも知れないから、先にお風呂に入りましょう」 「おふろに? グス」 「うん、さ、お風呂に行こう」 女性店員は女の子の手を引き銭湯に向かう。 心地よい湯加減の風呂に浸かり、女の子は安心したのか泣き止んだ。
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