寿商店街の松竹梅

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「亜子ちゃん。そこは譲れネェよ。ウチのババアともここの伝言板があったから結婚したようなもんだ。 ま、結婚したらしたで、あんなおっかねぇ山の神になるたぁ、思わなかったけどさ!」  ガハハハハと松さんは豪快に笑った。 「ご利益保証されているじゃないですか!」 「祖父母が亡くなって、ココを閉めてしまおうかって思ったんですけど…」 「亜子ちゃんが私たちのワガママを聞いてくれたんだよ。花岡がしまったらワシらボケる!ってね!」  竹さんが少し涙ぐむ。 「花岡のもさ、急ぎ過ぎだよ。」  しんみりと梅子さんがつぶやいた。 「松さんと竹さんは同級生だったって言ってましたね。」 「そう。私と亜子ちゃんのお祖母さんが同級生で、1コ下ね。」 「和裁の仕事だけでも私一人ならなんとか食べていけるんですけど、閉めてしまうと皆さんと会えなくなるのも寂しくて。 なるべく喫茶花岡を残しながら私ができる事をと思ったら今の形に。」 「それで、おかゆ・珈琲・和裁の看板なんですね。最初に見た時に関連性が見えなくて混乱しました!」 「まぁ、振られて大熱も出してたしねぇ!」  梅子さんの容赦ない突っ込みに一同、どっと湧いた。 「まぁ、からかうのはココまでにして、直坊。伝言板に書いておいた方がいいんじゃねぇのかい?」 「え…」 「ココは神仏にでも祈るつもりで。」 「梅子さん、伝言板か神様なのかはっきりしないですー」 「正直、その元カノにまだ気はあるのかい?プロポーズして振られたんだろ?まだ本気ってんなら試さない手はないね。」 (みんなー!やめてー!心配してくれるのはありがたいけど、亜子さんの前でこの話、やめてー!)  直は心の中で叫ぶ。直が口を開きかけると… 「…あの、私、もう作業に戻ります。御用があったら声かけてくださいね。」  亜子は気まずそうに、そそくさと席を立った。 (ああ…絶対、誤解してる…)  亜子が奥に入るのを確認すると…松さんがガッと直と肩を組み、引き寄せ、ひそひそ話をし出した。 「で、直坊。正直な所、どうなんだい?」 「ままま松さん?どうって何がどう…」
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