ベロチューは好きですか?

4/10
前へ
/113ページ
次へ
舌がうごめく。薄くて敏感な表面を、ぐにぐにぬるぬるしながらなぞって、何とか割って入ろうとしてくる。 「んんっ」 固く閉じて侵入をはばむと、より舌をつっこもうとしてくる。頭を振って逃げようと試みるけど、両手で押さえられて、思うように出来ない。 ベロチューは嫌いだ、どうしても牛タンを連想しちゃうから。 あの巨大な粘膜を、キヨコさんは美味しいと力説するけど、おれにはただのキモチワルイ塊にしか見えない。常に、大量のヨダレにまみれてるんだぞ。 人間の舌だって、スケールは違っても同じだ。アレを口に入れるなんて理解出来ないししたくもない。煮ても焼いても、たとえジャーキーになっててもおれにはムリだ。 「静、ねえ静」 なんだよっ。 「口、開けて」 やだ。 「お願い、ちょっとだけで良いから……」 「……」 情けない声に見上げると、哲哉の眉が八の字になっていた。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加