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舌がうごめく。薄くて敏感な表面を、ぐにぐにぬるぬるしながらなぞって、何とか割って入ろうとしてくる。
「んんっ」
固く閉じて侵入をはばむと、より舌をつっこもうとしてくる。頭を振って逃げようと試みるけど、両手で押さえられて、思うように出来ない。
ベロチューは嫌いだ、どうしても牛タンを連想しちゃうから。
あの巨大な粘膜を、キヨコさんは美味しいと力説するけど、おれにはただのキモチワルイ塊にしか見えない。常に、大量のヨダレにまみれてるんだぞ。
人間の舌だって、スケールは違っても同じだ。アレを口に入れるなんて理解出来ないししたくもない。煮ても焼いても、たとえジャーキーになっててもおれにはムリだ。
「静、ねえ静」
なんだよっ。
「口、開けて」
やだ。
「お願い、ちょっとだけで良いから……」
「……」
情けない声に見上げると、哲哉の眉が八の字になっていた。
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