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真っ白な空間にただ一人。四方八方見渡しても何も無い。
ところが、よく見ると前方にこれまた真っ白な箱がある。大きさは俺と同じ位だが、白に白だから見にくくて仕方ない。
俺は右手に握られている杖を箱に向ける。よく見れば、箱までの距離はそれなりにある。しかし、そんな事も気にせず俺はポーズをとって叫ぶ。
『浮け!!!』
するとどうだ、箱はゆっくりと床から離れ、宙に留まった。その上杖を左右に動かすと、箱も連動して左右に動く。実に気分が良い。
今度は何も無い所に照準を合わせて杖を突き出して叫ぶ。
『現れろ!!!』
するとさっきと同じ大きさの白い箱がもう一個、床から出現した。まるでところてんが押し出されたみたいに出てくる。もう口元の笑みが隠せない。
その後も、何回も呪文を唱えては箱を出した。気が付くと至る所に箱が置かれていて、本当にところてんを押し出した後みたいだ。
「もうちょっと遊んでみますか!」
杖に意識を集める。そして無造作に並べられた箱を浮かしては動かし、浮かしては動かすを繰り返す。
そうして出来たのは俺の四倍の大きさはあるだろう白いピラミッドだ。しかし相変わらず白いせいでよく見えない。けれど満足している事は確かだ。
杖を振り回してニヤニヤしていると、どこからともなく声が聞こえてくる。
「貴方に...特別な呪文を教えましょう...」
途切れた優しい声がこだまする。ここには俺しかいないはずじゃなかったのか?
「いいですか...よく聞いて...くださ...い...」
特別という単語に心踊らせている俺にその声はこう言った。
「起きな...」
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