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部屋を出ると、家の真ん中にある吹き抜けを囲むような、二階の廊下へとつながる。
背中の開いたカーディガンから翼を出しながら、背中側のファスナーを羽を挟まないように閉め、わたしは二階の廊下から、ガラス張りの吹き抜け側を覗きこむ。
天窓からはまだ、薄明かりしか差し込まず、観葉植物に囲まれた階下のピアノの前に、お姉ちゃんの姿は無かった。
「ふふ。きょうは珍しく、わたしが1番の早起きみたい……」
吹き抜け側の硝子の中で、優雅に游ぎまわる沢山の金魚は、グラスリウムといって、窓硝子全体に投影された映像だ。その一ぴきに、指でつん、と無意識に悪戯をする。指先に、半透明の金魚がぱくぱくと寄って来た。なんだか嬉しくなって、つい、くすくすと笑いがこぼれ出てしまう。
これから、どうしようかな。
屋上から庭を見下ろして、パパが薪割りをしていたら、お手伝いしてみたいな。
きっとパパ、わたしが早く起きてお手伝いをするなんて言ったら、驚くだろうな。
階段は、廊下の向こう側だ。
いつもは日当たりの良い階段室が薄暗くって、新鮮だった。パジャマのまま、サンダルを足に引っかける。この格好、少し寒かったかな。
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