897人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「ちょっと手を出してみろよ。」
下品な笑いを見せながら蒲田は言う。その手にはナイフがあった。切れ味を試したがっているらしい。
だが佐藤は動かない。
「おい!ほら手を出せ。」
訝しげに蒲田が佐藤を見る。佐藤の思考は止まらない。
なぜ奴隷が存在する。同じ見た目、同じ種族。なのに何故階級が存在する?
誰が決めたのだ。なぜ同じ人間で、こんな差が出てきてしまうのだ。どうすれば奴隷はなくなる?
その時、佐藤の頭の中に小さな光が、灯り始める。答えらしきものが浮かびあがった。
「どうした佐・・」
蒲田が言葉を続けようとしたその瞬間、佐藤はその手からナイフを奪い、刃を蒲田の首元に当てていた。蒲田の目が恐怖で開く。
「お、お、落ち着け、落ち着け佐藤。どうしたんだ?・・な?すぐナイフを離せ。」
佐藤は蒲田を見つめる。どうやらこの男は答えを持っていないようだ。
「お世話になりました。」
佐藤は静かに、ナイフを横にスライドさせた。血が勢い良く飛び散り、まるでホースから噴射された水のように佐藤の顔にかかる。
その血を全身で浴びながら、目の前で倒れてい蒲田を見つめた。そしてあの女がいる部屋へと向かう。
最初のコメントを投稿しよう!