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「何か用・・?」
物置小屋の前に立っている佐藤に女が尋ねた。最初に連れてこられた時と比べて随分とやつれている。佐藤に思考のきっかけを与えた女。蒲田から「杏」と呼ばれていた女。
「逃げよう。」
蒲田の持っていた鍵を手に、佐藤は手錠を外してやる。
「どういうこと?」
突然の佐藤の来訪に杏は動揺しながら尋ねる。
「考えたんだ。なぜ俺は奴隷なのか?」
お前のおかげだと付け加えた。
カチリという音と共に手錠は外れ、地面に落ちる。
「そしてなぜこの世界で奴隷が生まれてるのか?」
座っている杏に手を差し伸べ、佐藤はさらに言葉を続ける。
「人類が貧富の差を越え、お互いの違いを認め合いながら同じ方向を見る時。それはどんな時か。」
佐藤は口の中が乾くのを感じる。これだけ自分の言葉で話をしたのは初めてのことだ。
「それは・・どんな時なの?」
立ち上がりながら杏が言う。手首を逆の手でさすりながらも、佐藤を見た。
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