兎姫と狼人間

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「今回の為に『人間用』に(あつら)えた物ばかりで、カラコンも衣装もすべてオーダーメイドです」 金持ちのバックボーンには驚いたが、イザリ屋のつなぎはさすがに着替えられない。 「これは仕事で身を守る為でもあるんで…」 「心配されずとも、完全防護で特殊な物を他の世界から仕入れてます。姫が着ている服も今はそれらなんですよ」 つけまつげにカラコンにメイク。 こちらの世界でも当たり前のように使われているが、初めての体験はコスプレ気分で、着せ替えを楽しみ始めていた。 「あっ、私ネイルやる」 リップも仲間に入り瑠里も隣で珍しそうに見ていたが、色んなアイテムを使って化けていく私にオッサンみたいな感想を溢した。 「こんだけ変身されたら、プロフィール写真で騙される気持ち分かる。カラコン使わなくても、ゴールドなら自前で出せますよ、その般若」 「誰が般若だ!ゴールドの時はただの化け物だろうが!周りが逃げるわ」 ネイルは塗ってじっと乾かすと思ってた私。 ライトを少しだけ当てジェルネイルみたいにツヤツヤの指先を見て驚いた。 「今はライトで硬化させて、変える時はサッと剥がすのが主流だよ?爪の負担もないから」 「……はぁ」 瑠里も興味を示したみたいで、ネイルを塗り試している。 イナリも私の足元で寝転んでいたので、ふと気がついてリップに質問をしてみた。 「そういえば、ソフィーとやらは何処にいるの?」 「あっ!ホントだソフィー、ソフィー?」 リップが部屋を探しまわると、クローゼットの中で小刻みに震えながらじっとしているようだった。 「おかしいな、リボンは人懐っこいのに。こんな怯えたソフィー見るの初めてかも」 寝転がっていたイナリが起き上がり、クルクルゥ…と聞こえたので慌てて抱え上げた。 「ソフィー別の部屋にした方がいいんじゃない?イナリがちょっと怯えてる気がするっ!」 獲物を捉えたような目つきで、ソフィーから視線を離さない。 「そうだね、イナリはこの世界慣れてないし、ソフィーを見てビックリするのも分かる気がする。ばあやお願い出来る?」 『いや…ウチの王子は仕留めそうな目だし、ソフィーもそれに気付いてる』 震えるソフィーをばあやが部屋から出すと、つまらなそうにゴロンとなり股を広げるイナリ。
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