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「姫にとって今回の集まりは又とないチャンスの下見なのです。将来の旦那様を探し、異世界にアピールする大切な舞台」
「え、スイーツ会ですよね?」
「表向きはそうですが、実際は嫁と婿を探す交流の場なので、私も気合を入れて録画をします」
こういう役は私達には全く向かない気がする。
理想の男性は誰ですかと質問し、ハリウッドスターの名前を出す勘違い女を演じるくらい面倒だ。
まず集まりとかパーティに参加した事もないし、正直兎が誰と結婚しようが興味もない。
膝の上のイナリは、着ぐるみが布団代わりになっているのか熟睡していて、股を広げスヤスヤと眠っている。
「着ぐるみには金具が付いてますので、そのままポシェットみたいに持ち運ぶ事も出来ますよ」
ミラー越しに様子を見ていたばあやは、肩ひもを渡してくれイナリの着ぐるみにつけておいた。
「異世界の人と結婚願望は、憧れというよりこの国の為なんです。交流を深め観光客を増やし、技術を交換する橋渡しに姫はなりたいと」
「見ての通り私はガサツで、誰も寄りついて来ませんが代役で大丈夫ですか?」
「構いません。今日は殿方の下見がメインですし、本番のハロウィンパーティは本人が出るつもりでいらっしゃます」
金持ちなりに国の為とか外交的な事を考えるのは大変だと思うが、眠たくなりそうな難しい話だ。
「百合さん、長めのジレで双棒は隠せてますが、股が開いてるので足さばきには気をつけて下さい」
男性の八雲さんに言われた時点で終わっているが、私までドラム缶のようになりたくないので、急に姿勢を正した。
「はしたないっ!殿方の前で足を開く等、言語道断です!股を開いていいのは特定の男性の前でのみ、ディナーが終わったシャワーの後です」
「生々しいんだよばあば!でも、一応頭の隅に置いておく」
「何なら今夜、俺と練習がてらディナーしてもいいよ?」
八雲さんがそっと耳打ちすると、ミラー越しに見ていたばあやが杖で頭を弾いた。
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