兎姫と狼人間

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「ーーイテッ!」 「ここにいる間はそなたも女性でしょうに。軽はずみな行動をして、姫がレズだと噂されるようなスキャンダラスは避けてもらいますよ?」 『いちいち生々しいんだけど』 抜かりのない監視力に脱帽をしながら、肩ひもを提げるフリをして後ろにも目がついていないかチェックしておいた。 会場に着くと私のテンションは急に上がって来た。 ガーデンテラスにはカラフルなハートのバルーンで飾り付けがしてあり、中にはスイーツがズラリと並んでいる。 噴水の先には背の高い珍しいバラが咲き誇っていていい香りもしていた。 「うわぁ、あんな綺麗で迫力のある薔薇初めて見た」 「ここは花も有名なんですよ、姫の香水もあのバラのエキスが入っています」 回りも人間な見ためが多いし、ルックスで冷や汗が出る事もなく楽しめそうな雰囲気だった。 「ばあば、あれ食べていいですか?」 「ばあやでしょ!それに敬語は必要ありません。隣で殿方を録画しておくので食べても構いません」 スプレーを振って口に入れていると、リアルぬいぐるみポシェットが、匂いに誘われてゴソゴソと動き出した。 「ちょっと待って、イナリの分もお皿に入れとくね」 紐を繋いだままポシェットを持ちあげると、腰の位置辺りでガツガツと食べ始めている。 「凄い連係プレーだね、ポシェットがスイーツ食べてるように見える」 友達役の八雲さんも隣でお皿に盛ってはいるが、辺りには注意を払っていた。 ばあやは誰一人逃すまいと隣でビデオをガッツリ構えている。 スイーツを食べていると、ちょっとゴテゴテした三人組の女性が近づいてきた。 美人だが性格が悪そうな感じなので、これがリップのライバルだとひと目で分かった。 付き添いの二人は、ドラマで相槌を打つ嫌味な女子に見える。 「あら?早速スイーツを食べ始めるなんて珍しいわね、殿方の目は気にならないのかしら?」 「パームに負けると思って、学校も出てこれないくせに」 「ちゃっかりここに居るなんて図々しいわよね」 パームが話し出すとつられるように友達AとBも半笑いで口を開きだした。
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