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狼が来ているという事は、近くに社長達もいる筈なのでジッとしてるのが一番かもしれない。
助かる事に距離も十分あるしモテるのか女達にも囲まれている。
暫く様子を見ていたが、私の姿に気づくと視線を止め、金茶の目がキラリと光ったように思えた。
「八雲さん気付かれました、離れます?」
「そうですね、帰りましょう」
ばあやも録画が終わり素早く私達と出口に向かう。
車が停めてある場所までは少し距離があるので、ばあやを挟んで八雲さんが先頭で急ぎめに歩いた。
近道なのか薔薇の庭を横切ると、甘くていい香りが濃くなっている。
「ここを抜ければ駐車場です」
沢山の薔薇が道沿いにも植えられているが、背が高いのが仇となり視界は良くない。
庭にはピンクや黄色が多いが、道沿いの花は大ぶりなので、綺麗だけどずっと見ていると吸い込まれそうで怖い気もした。
駐車場に着くとまずは助手席にばあやを乗せ、私達も後部座席に乗ろうとすると、狼人間が正面と背後に三人ほど現れた。
「そんなに急いで帰らなくてもいいでしょうお嬢さん方、まだこれからですよ」
「何なら場所を変えても構いませんけどね」
さっき見たモロと手下の姿はなく、コイツらはどうやら下っ端らしい。
「ばあばから日頃知らない人について行くなと言われているので、お断りします」
「大丈夫ですよ、ばあやも連れてけば文句はありますまい?」
運転手とばあやは状況が飲み込めてるようで、顔を低くして隠れている。
見かけは人間だが、明らかに目の色と身のこなしは人のものとは違っていた。
私は双棒に手を伸ばしつつ、運転席のガラスを破ろうとしている狼人間を犬螺眼で吹き飛ばした。
「な…っお前、姫じゃないのか!」
怯んだ敵にニヤリと笑うと、双棒から針金を伸ばしながら自己紹介した。
「名前はリップ兎姫だよ。趣味で護身術を狐塾で習い始めた香水プロデューサー、宜しくね」
「アイドル風に言っても怪しいプロフィールにしか聞こえませんね」
八雲さんに指摘され残りの二人を灰にすると、ポシェットのイナリを持ち上げ、続きを締めくくった。
「この子はペットのソフィー、甘えん坊で寂しがり屋さんで、毎晩一緒に眠って…」
「もういいです、なりきりアイドル風は!イナリも心なしかつぶらな瞳にしなくていいですから」
後部座席に押し込まれると、さっきまでビビってたばあやは、腹を抱えて大笑いしていた。
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