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夜に出かける事なんてプライベートではほぼない。
本当なら妹達も連れて行きたいが、姫の見張りもあるので、一人で抜け出すしかないが若干心細い。
いつもなら横になりながら時代劇を見て、ドラム缶が何か食べると聞き『さっきご飯食べたばかりでしょ』と妹が注意してるころだ。
可愛い街並みが少しずつ見えてくると思わず注目してしまう。
メルヘンな造りのお店やオブジェが広がっていて、観光に良さそうなのも頷けた。
街並みから外れてきたので降りる支度を始めたが、タクシーは止まる様子もなく奥へと進んで行く。
可愛いから怪しいというか、大人の雰囲気のライトと看板に変化も出てきた。
道幅も狭くなり路地みたいな通りだが、明らかに夜の街になっているのが分かる。
足を踏み入れる場所ではないと思っているのに、バニーガールの写真やセクシーな下着姿の看板の前でタクシーが止まりゾッとした。
「えっ、ここで降ろすんですか?」
「バニーウーマンはこの先ですよ?違いました?」
「いえ……大丈夫です」
イザリ屋のカードで支払いをし、こんな夜の街に一人で来させた社長の髪をむしってやろうとテンポよく歩き出す。
でも数分するとドレス一枚でオッサン達と歩いてるホステス的な者や、若い男女もフラフラしていて思わず下を向いていた。
バニーウーマンと英語で書かれているが、ここは他とは造りが違い、何だか高級そうな空気がプンプンしている。
「入りづらいん…だけど」
ドアを開けようかどうか迷っていると、肩を叩かれギョッとして振り向いた。
「お嬢さん、ここは貴女が入るような場所ではありませんよ?」
ウサ耳はついてるが少し強面で、店のボディガードといった感じだが、悪い事はしてないし店の名前は明らかにここを示している。
「あの、ここで待ち合わせていて……キツネ面の爺さんはいませんか?」
「えっ?立花様のお知り合いですか?」
「まあ、そんな感じの……」
急に背筋を伸ばした兎はエスコートしてくれ、店内に案内してくれた。
お酒の匂いとシャンデリア、ピアノの音が大人の雰囲気を醸し出している。
落ち着いた赤いソファのゆったりとした空間は、さり気なく隣と顔を合わす事もない気遣いのある造りになっている。
一番奥の広い席の真ん中にはキツネ……いや、社長が座り横には綺麗な兎のお姉さんに囲まれていた。
カーブした席の端の方で男性二人が酒を飲んでいるのも見える。
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