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ブルーのドレスに小さな帽子、先には細かいネット状のヴェールがかかり、顔を少し隠しているがリップは紺色のドレスでほぼ同じ姿だ。
お互いに金髪のカールを左側からお下げに纏めていて、パッと見双子だが同じような格好で一緒にいても、影武者がバレバレで不安な気持ちになる。
「今流行ってる『マカロン』っていうヒロインを真似てみたの、ハロウィンにはピッタリでしょ?」
「マカロン?私はラズベリー味がいいな」
「食べ物じゃないって、すっごく可愛いんだから」
ばあやと瑠里は黒のドレスを身にまとい、イナリはオレンジのドレスに黒のとんがり帽、紫のマントをつけハロウィンの雰囲気を出している。
車二台で会場に向かうが、後部座席にリップと私と瑠里、膝上にはソフィーことイナリを乗せ、行き道は『殿方に声をかけられたら』の反応を練習させられていた。
「まあ百合は私の隣にいるから参考にすればいいし、瑠里はばあやが傍にいるから大丈夫」
堂々と姿勢を伸ばして座る姿はやはりお姫様らしいし、色白の肌に袖のレースがおしとやかで参考にしたいと思える。
会場に着いたのはすっかり日が落ちた時間帯だが、可愛い城の会場にハロウィンの衣装はマッチしていてコスプレ姫や王子で賑わっていた。
八雲さん達は少し離れたところで様子を伺ってくれていた。
姫や王子はお供を壁側につかせ、それぞれ気軽に話しかけたりしていた。
瑠里とばあやもそれに合わせるように壁際に移動して、食べ物を摘まみながらこちらを見ていた。
リップは綺麗で目立つので、薄いヴェールをしていても何人かに注目されている。
私は狼に鉢合わせしませんようにと願いながら、リップの隣で注意を払っていた。
会場入り口は招待状を見せれば誰でも入れるが、見回りや護衛と思われるコスプレに扮した者もチラホラいる。
王子と姫に何かあったら困るので別で警備はしているようだ。
部屋の入り口は二つでバルコニーがあり、窓は解放されていて月を眺めトークを楽しめるスペースも準備されている。
カボチャの飾り物やスイーツのデコレーションを見るとさすがは『可愛い』と言われる国だけはある。
不気味なお化けのディスプレイまで、お茶目にアレンジされていた。
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