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リップは中央のテーブルでケーキを一つ皿に乗せると、キョロキョロと辺りを見ている。
恐らくお目当てのモロを見たいんだろうけど、私としては引き離したい。
ケーキを四種類程乗せてから、あっちで食べようと壁側に移動させた。
リップは相変わらず視線でモロを探していたが、私達に声をかけてきたのは違う人物だった。
「こんばんわ、可愛いコスチュームですねお嬢さん方、この世界で流行ってるんですか?」
見た目は人間……でも耳が生えているが、何人間なのかよく分からない。
黒のタキシードだが、耳の形と色で探ろうと目を凝らすと隣に居たリップが受け答えをしてくれた。
「こんばんわ、狐の世界の王子ですよね?マカロンっていうグループが流行っているんです、お気に召しまして?」
『き、狐かよぉ!』
急に目がシビアに変化し、狐人間ってこんな種類もいるのかと上から下まで観察した。
「そうなんですか、どちらが誰なんでしょう?」
王子は私にも話を振ってきたが、名前が分からないので適当に答える事にした。
「えっと、私がラズベリーで隣がチョコです」
リップの顔がピクッとしたが、どうせ知らないんだし構わないだろうとケーキに手を伸ばした。
「王子、ベリーさんが美味しそうにケーキを食べてらっしゃるのでおススメを聞いて食べませんか?」
隣に使用人らしき年配のお爺さんがいて、壁側ではなく王子の隣で、デザートのあるテーブルを見ていた。
「じいや、レディの前ではしたないですよ、すみません甘い物に目がなくて……」
「あちらに新作もありますので、楽しんでらして下さい」
リップがそういうと、じいやに手を引かれて王子が場所を離れた。
「ホラね。顔は可愛いんだけど、イマイチなんだよね」
さっきまでの笑顔と違う変わり身の早さに、女性の怖さを垣間見る。
「狐って胡散臭いけどさ、さっきの人はそんな悪そうに見えなかったよ?」
「そう?私はあの人じゃディナー後に股は開けない」
「あ…そぅ…なんだ」
ばあやの教えを従順に守っているのは分かるが、声に出されるとやっぱり生々しいと感じた。
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