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小さめの悲鳴が聞こえたかと思うと、スイーツ会で見た狼人間のモロとハバナが部屋に入って来た。
リップも目がハートになっているが、私はベールを深く被り警戒するように姫の前に移動した。
シャンパンを飲む姿もサマになっているし、確かにスタイルもいい。
品定めをするように声をかけるハバナに対して、モロは目を逸らし気味で、ウチのリーダーを見ているようだった。
「やっぱ競争率高いな…これじゃ近づけない」
「他にも目を向けてみたら?お買い得品は見逃してしまいがちなんだから」
何人かの男性に声を掛けられ、リップの対応は丁寧だったが、何となく元気がないのは分かる。
モロと話をしたいのは見てとれるが、出来ればこのまま諦めて欲しいと僅かに期待もしていた。
「これ美味しいですね!」
さっきの狐王子とじいやは、友達を連れてこちらに戻って来た。
リップも仕方なく相手になって話をしているが、私は一歩下がってケーキを食べていた。
恐らく王子は姫に気があるし、狐というのは気にいらないが今の所良さそうな印象だ。
リップも徐々に口数と笑顔が見えてきて、まんざらでもない感じになっている。
少しホッとしていると、隣にじいやが移動して話しかけてきた。
「ベリーさんは参加されないんですか?さっきからケーキばかり。ここの女性は綺麗な方ばかりで王子はスッカリ舞い上がってます、だが……」
じいやが指を差した先に、タキシードを着て皿にスイーツを山盛りにした男性が、窓際で黙々と食べおかわりを繰り返していた。
「もう一人の王子は花より団子でしてね、ルックスはいいのでベリーさん、いかがですかな?」
スラッと背は高くてハットを被っているが、恐らくイケメンで女性が何人か注目はしている。
でも狐はどうも信用できないし、あれも実は化けているだけかもしれない。
どう断ろうかと悩んでいると、リップが嬉しそうな顔をして私にメッセージカードを見せてくれた。
「どうしよう!モロ様がバルコニーで会いたいって」
嫌な予感がして辺りを見渡したが、モロやハバナの姿が会場から消えていた。
「リップ、お願いだからよく聞いて……」
耳打ちすると残念そうな顔をして、その場にいた女装の赤刺繍と距離を保って部屋から出て行った。
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