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王子は頑丈そうな柵に鎖で繋がれていて、まだ気を失ってるみたいだった。
「姫、貴女達はここで死んでもらい、すべての罪はその王子が被って処刑されます」
「私達が本当の目的ではない…という事ですね」
「えぇ、モロが犯人だと仕向けたんです、兎でも何でも良かったんですよ」
双棒に手を伸ばすとパシッと手を叩かれ、空中に投げ出かけていた針金は、刀で切られてしまった。
ゾッとすると共に、刀が反射して更に不気味に光る狼の目に、ブルブルと身体が震えるのが分かった。
「護身用の玩具も私には役に立ちません。ボディガードに消された連中とは訳が違いますからね、おまけに今日は満月だし潜む兎も勝てませんよ?」
天井を見上げると八雲さんが静かに舞い降りてきた。
「……じゃあ試してみましょうか」
「私達は野蛮な犬とは違い、スマートに刀を使いますので、切り口は綺麗で死ねますよ」
お互いに構えたかと思うと、凄まじいスピードとパワーで刀を振り回していた。
『あれが双棒から出た刀?』
しなやかで赤い光を少し帯びていて、私が出す刀とは全く違っている。
八雲さんの強さに驚くと共に、互角に戦っている狼人間の凄さに圧倒されていた。
瑠里に目をやると縄は解いてる風だが、敵に見張られていて動けない様子だ。
双棒の針金を一太刀で引きちぎった奴等から逃げるのも容易ではない。
こちらも見張りに刀を首に当てられていて、変に力が入ると落とされそうだ。
「次にじいや二号と三号が来る!ばあやを連れて早く逃げ……」
「ーーザクッ!」
鈍い音と共に八雲さんの右腕が血で染まり始めた。
「口を動かしてる場合じゃありませんよ、私はアンタより目も鼻も数倍優れてるからな」
片腕で動きは交わしてるものの、八雲さんの顔が痛みで少し歪んでいる。
瑠里『今だ』と言わんばかりに鎌二本で素早く攻撃を仕掛けた。
でもアッサリ交わされてしまい、拳を向けられるとズササッと音を立て、入り口付近まで吹き飛ばされてしまった。
「瑠里――っ!」
大声を出しても首に当てられた刀のせいで、その場を動く事が出来ない。
「兎がそんな物騒な物持っても似合わないな、ビックリして思わず力が入った」
見張りですら全く歯が立たずで、愕然として妹の方に視線を向けていた。
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