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「女性に何て事するんだいっ!殺すなら私からにしな!でもアンタらに殺られる位ならこの薬で死んでやる」
瑠里に縄を解かれ自由になったばあやは、代わりに小瓶を口の前に持ってきている。
アンタらには負けないと強い忠誠心が篭った目は、姫の事を頭に描いているのが伝わってきた。
「止めなさいばあばっ!私がまだ生きてるのに、先に死ぬなんてはしたない!股を開くのはディナーの後って言ってたでしょうが!」
このままでは八雲さんもヤバい状況だし、瑠里もビクとも動かない。
自分の弱さに苛立ちを覚えていると『ボンッ!ドンッ!』と入り口のシャッターがヘコみ始めた。
「ひ~めぇ?開けて下され、じいやが参りましたよ!鍵だけじゃなくて、変なバリアがかかってますよ~、反抗期もたいがいにして下さい」
「なんだ?頑丈なシャッターがボコボコにされてるぞ」
見張りの一人が入り口に近づこうとすると、ハバナが大きな声をあげた。
「勝手に動くな!すぐに入って来れないし放っておけ」
ピタッと足を止めた見張りは、ばあやと使用人に目を戻した。
『じじぃ!そんなドア早くブチ破らんかいっ!』
バリアという言葉は気になったが、今は狐の手も借りたい位のピンチなのだ。
ハバナの攻撃が八雲さんの腕や足、色んな場所を擦りだしている。
緊迫した戦いを見ていると、青くぼんやりとした炎が見張りに降りるのが見えた。
「ーーん?」
目を凝らしてハバナの方を見ると、戦ってる姿の背中の辺りで黒い炎が燃え透けている。
『あれって奴の魂?真っ黒じゃん』
見張りも同じく黒い炎が心臓辺りにあり、それが見えた時、急に全体がちっぽけな者のように思えてきた。
私は地面に落ちた双棒を稲腕で浮かせると、そっと手に握り目を閉じた。
見た目は人間だけど、強烈なパワーの狼人間。
でも根底は私達がいつも執行をしてる昆虫類と大差がない、だたの罪人だ。
静かに目を開けると、奮闘している八雲さんに腹を括っているばあやの姿が見え、深呼吸をしてゆっくり歩きだした。
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