招かざる客

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「チンタラ待たせ過ぎなんだよお前ら!じじいも来ないし、結局自力で何とかするパターンだろどーせ」 「般若……頼りになるのはアンタだけだよ」 瑠里もノソッと起き上がるとばあやの元へダッシュした。 「あとは般若姫に任せて私らは、脱出しよう」 「ーー誰が般若だ!」 人の言葉をスル―し、シャッターに向けて柏餅の爆弾を投げると『ド――ンッ』と軽快な音を立て、扉が吹き飛んだ。 「般若姫とウチのソフィーの怒りを買ったら、地獄を見るよ」 爆発の音と同時に、イナリも柵を破ってハバナを睨みつけている。 「フゥゥ…クルクルゥゥ……」 そういえばさっきハバナが、犬の悪口を言ったのを思い出し、ちょっと笑いが出そうになった。 手には双棒から刀が伸びており、金色と狐火の青い光が微かに漏れている。 見張りに向けて構えた瞬間、灰になって崩れ落ち驚いて少し後ろへ下がった。 灰の向こうには、爆破のせいで顔がススで黒くなってた滋さんが手に刀を持っていた。 おまけに瑠里の手裏剣もカタンと落ちている。 次の瞬間ハバナ目指して走り、社長と向き合っている事はお構いなしに突っ込んだ。 イナリの風圧がハバナを吹き飛ばし、狼王子が入れられた檻にぶち当たる。 仰け反ったハバナに間髪入れず、馬乗りになり刀を両手で持ち上げた。 「犬の悪口と恋路を邪魔する奴は、魂抜かれて消えてしまえ」 「ーーザンッ!」 振り下ろした先は、魂が黒く燃えていた心臓の辺りでハバナは叫び声と共に灰となって消滅した。 八雲さんに目をやると、もう一人の見張りを倒した社長と滋さんが手当に入っている。 二人共真っ黒な顔をしてるので、瑠里の爆弾をシャッターの向こうから真面に受けたらしい。 扉がなくなった入り口をイナリを抱えて通ると、もう一人の使用人の女性が腕を組んできた。 「ベリーさん素敵ですね、魂見えるようになって、閉じ込めた甲斐がありましたわ」 「あなた…誰?」 「あんな爆弾使って破られるとは、予想外でワクワクしました。本当……ハマりそうですよ」 カサッと音がしてウエストポーチを見ると、オヤツに入れておいた青リンゴのグミがなくなっていた。 「やっぱり…キツネってやだーー!」 姿を消した使用人の方に向かって、大声で叫んだ。
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