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瑠里達の姿がないので、そのまま会場に向かって走ったが、もしかすると朧もまだ居るかもしれない。
恐らく狐王子のじいや…だった筈が、いつの間にかリップの使用人に化けていた。
いくら狐に力を貰ったからって、朧が様子を見に来るとも思えない。
考えられるとすると、食いしん坊の爺さんが興味本位で結婚パーティに付き人として参加し私達を見つける。
こいつら何か面白そうな事に巻き込まれるから、便乗しようといったところだろうか。
どちらにしても青りんごのグミが無くなってる以上、朧がここに居たのは間違いない。
会場の人は少し減っていて、狐王子とじいやの姿を確認する事は出来なかった。
チッと舌打ちして、社長達の所に戻ろうとすると「すいません」と声を掛けられ驚いて飛び上がった。
「はいっ!」
振り返るとケーキばかり食べていた狐王子だった。
近くで見ると洋を思い出す爽やかなイケメンで、耳を省けば人としか思えない。
「ベリーさんですよね?どうしたんです、その格好…ドレスの裾が破れてますよ」
「あの、ちょっと食べ過ぎて運動しよう走ったら、何処かに引っかけたようで…」
コイツは朧と関係あるのか、でも勧めてきた位だから身内だろうとか、頭でグルグルしながら誤魔化す方法を考えていた。
「ベリーさんとは気が合いそうだから顔を見ておきなさいって、良かったら連絡先交換できますか?」
『ど、どーすればいいのぉ!?』
狐と連絡先交換なんて方法も分からないし、こちらの世界と繋がるのか等の疑問も浮かんでくる。
朧の知り合いなら、交換しておけば疑問が浮かんだ時に相談出来るとも考えたが、迷いながら言葉を選んだ。
「折角なんですけど、私にはまだ連絡先交換って早いのでお断りします」
今は姫役をしているが中身はただの人間で、ここには仕事で来ているので、この人まで騙すのはよくない。
「早くないですよ、だって僕一目惚れしたから結婚して欲しいって思ってます」
「ーーえぇっ!?」
唐突過ぎる言葉に驚き、じじいの一言だけでその気になってんじゃないよと焦り、この場から逃げたくなってきた。
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