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「ウチのもう一人の王子は姫にフラれてヘコミ中ですが、モロは上手くいってるみたいで喜ばしい」
「姫の誕生日には絶対にベリーさんは呼ばれると思ってましたよ、使用人に扮した妹さんが居なくて残念です」
頃合いをみておかわりをしに行くと、王子も当たり前のように私よりも多く盛ってベンチに戻った。
「あ、僕の名前は桜舞、このクレープも美味しいですよね」
段々と食べるスピードが加速していき、こちらまでつられそうになったが、ドラム缶の事を思い出し止めておく事にした。
桜舞は更に二回ほどおかわりすると、痺れを切らしたじいやが声をかけた。
「もう行きますよ時間が勿体ないので、見ての通りリップとモロはもう少し二人だけにさせてあげましょう。ベリーさんは暇ですよね?」
「いえ適当に摘まんでおきますのでお構いなく…」
「王子と散歩風にあちらの木の下に移動してもらいましょうか」
一応断ってはみたが、促されて三人で木の下まで行くと、じいやが指をスナップし目の前の光景が大きな体育館のような建物に移動していた。
「えっ……ちょ、ここどこでしょうか?」
「少し離れた場所ですよ、百合さんあの日以来モヤッとしてますよね」
もうベリーさんと呼ばないじいやは、姿は同じだが朧の声をしている。
思い当たる節があるのは狐火の事で、どうせこの妖怪狐どもはお見通しに違いない。
犬の世界で会った時に、すべてを見透かしているのは分かっている。
「えぇ…ご存知の通り先日怖い敵に合い、偶然刀が出ましたがあれ以来上手くいってません」
「モヤッとしたものを解決する前に、少し話を聞いて貰いましょうか」
朧は社長のように床に座り、私も緊張して思わず正座して目の前に座った。
朧達が『能力を授ける者』だという事は知っているが、ただ渡すだけではないといい始めた。
それはそうだろう、タダ程怖い物はないし、授けられる者は良くも悪くも凄い力も持つ者だ。
狐は神と崇められているが、それでも厄介な相手がいるというのだ。
『怪かし』と呼ばれる死者を操る者らしい。
人でもなく獣でもない姿のない存在、命を壊して弄ぶのが得意な者。
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