招かざる客

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住む場所を変え目的もなく殺めていく怖い影。 狐は魂を抜く事が出来るが、元々魂が何もない怪かしは厄介な相手という訳だ。 この世界は表側と裏側、両方に属する狐とどれにも属さない怪かしのような凶悪なグループがいて、それを阻止すべく協力して始末したらしい。 崩壊したと思っていたが、どうやら残っていた者がいるようだ。 怪かしは手強く、話を聞くと私なんか一瞬で殺されそうだが苦手な物はあるらしい。 鼻の効く犬、闇をも切り裂く鎌イタチの刃、狐に烏等々……ズラリと並べられたが、耳に残ったのはその四つが限度だった。 それが住む世界には寄りつかないらしい。 「イザリ屋の能力は見極め方に独特のやり方があるようだが、実はこっそりと力を授けた者も中には居る。堂々と授けたのは貴女方とお頭だけどね」 以前はこの世界と私達の住む世界の出入りは自由で、狐の世界が今でいう税関みたいな場所だったらしい。 違う世界の者は姿を変え、私達の世界でも住んでいたそうだ。 人はあまりにも弱く脆い存在で、狙われ始めてからは封鎖し、文化交流は空蝉屋が一手に引き受ける事になった。 空蝉屋にも身を守る強い者はいるが、危険な場所にはイザリ屋をお供につける仲らしい。 「ざっと聞いて分かると思いますが、貴女方姉妹は既に怪かしが嫌う力を三つ手に入れてる訳です」 「……はぁ」 好きでもらった訳ではなく、要らないけど偶然手に渡っただけといい訳をしたいくらいだった。 「貴女達はまだ身体の使い方を分かっていない。勿体ない事に、器はどんどん大きくなっているというのに」 そう言われても、太った記憶もないし見た目は以前と変わらない。 ピンと来ないので首を傾げていると朧がニタリと笑った。 「試しに狐のチカラだけ解放してみましょうか、きっと晴れ晴れした気持ちになりますよ」 朧につられて立ち上がると、手を(かざ)され自然と目を閉じた。 少しすると身体が温かくなり、プールで浮き輪の上にプカプカと浮かんでいるように、リラックスしてきた。 『あ、何だか肩こりが取れたようなスッキリとした気持ちになってきた』 身体が軽くなって目を開けた瞬間「バンッ!」という大きな音が聞こえ思わずしゃがみこんだ。
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