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任務までの休みは、母の旅支度の買い物に付き合わされた。
日にちが近付くにつれワクワクする母に対して、私達は食事が喉を通りづらくなっていた。
カマキリのヘルプの時みたいに『絶対に死んでなるものか』と気合を入れ、トレーニングも真剣でリーダーと啄、和音さんも付き合ってくれた。
「おい、狼人間でおかしな情報分かったらすぐに連絡して来いよ!」
啄が珍しくやる気になっていて、役に立ちそうな毒薬もセレクトしてくれてるようだ。
ボンレスが狙ってる無我だとしたら、すぐに回れ右して退散するしかない。
狼人間というくらいだから、きっと凱に似た化け物だろうし、犬以上に怖そうな予感もする。
どちらにしても無色のチームが相手にする敵じゃないのは、皆の顔つきを見てよく分かっていた。
イザリ屋の任務は影……と言っても今回は囮役でイレギュラー。
勿論、堂々と城の正門からは入らないが全使用人に通知が回り口外は禁止されている。
私達は調理場から入り姫の地下の隠れ部屋で身を守るようだ。
城内は八雲さんのチームも、女装をして使用人として潜入する。
滋さんは連絡役兼、狼人間のを動きを追い、社長や金刺繍のメンバーでいつでも執行出来るよう待機するらしい。
ここまで聞いても、不安が拭い去れないのは今まで怖い思いをしてきたからだ。
いよいよ出発の日になり、母を見送った後イナリのオヤツをリュック一杯に詰め、瑠里と顔を見合せ職場に向かった。
「プラスに考えたらさ、強さを身につけたら殺されないって事だよね?」
「でも相手が化け物だったら?世界は広いんだよ…私らが見たのはまだ一部なんだからさ」
受付には違うオバサンがいたが、キビキビとした口調で着替えを渡されロッカーに向かう。
イナリのオヤツをチェックしてもらい、指示された部屋で待つ。
綺麗にメイクした八雲さんと数名の赤刺繍の人……といっても、皆女装をしているのでよく分からない。
「こんだけ綺麗ならもう女でいいのに。女として生きても十分やってけるよ?」
瑠里が最後の足掻きを見せたが、誰も手を上げる者はいなかった。
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