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Atae side
與「親の事情で京都からきました。與真司郎です。宜しくお願いします。」
人前で何かをするのが苦手な俺は簡単に挨拶を済ませ、浦田先生に言われた席についた。
その隣の席の子。少し赤毛で華奢な体のその子は、俺なんかに見向きもせず下を向いたままだった。
與「…よろしゅうな?」
そう言った後で驚いた。いつもの俺なら自分から話しかけるなんてこと絶対にせえへんかったから。
けど、その女の子は俺の言葉が聞こえてんのかわからんくらい微動だにせんかった。
……どうすれば俺の声に応えてくれるんやろ?
……どうすれば俺の言葉にうなづいてくれるんやろ?
……どうすれば君の顔を見ることができるんやろ?
いつの間にか名前も知らない彼女に夢中になっていた。
授業が始まってからその子の顔が見れるんちゃうかって期待しとったんやけど
残念ながらその子の長い髪のせいで、隣を見ても顔が隠れていた。
「はぁ…。」
______バシッ
「なーに、ため息なんかついてんだよっ」
「いたっ。」
誰や俺の背中を叩いたんは。そう思って後ろを振り向くと…
與「おぉ、にっしー。同じクラスだったんかいな。」
サッカーの選抜チームで昔一緒だったにっしーやった。
西「いや、俺の方がびっくりしたわ。いきなりそこから真司郎が入ってくるんだもん。」
與「俺だってこっちに、にっしーがおるっちゅうのは知っとったけどまさか同じ学校とは思わへんかったわ。」
西「それにしては、あんま驚いてなかった気がするけど。またなんか考えてたんだろ。」
與「うるさいわ。にっしーに話すようなことちゃうし。」
…話したとこで、ろくな答えなんか返ってこんしな。
西「真司郎今、話したとこで、ろくな答えなんか返ってこんしな。って思ったでしょ。」
與「だってそうやん。」
西「うっわ、さいてー。俺だってちゃんと考えるときは考えますー。」
與「ちゃんと考えるときっていつやねん。」
西「大切な子の悩みならいつでもちゃんとしてますー。」
與「大切な子って誰やねん。」
西「ん?俺の彼女。」
與「ふーん、にっしーの彼女ねー。…にっしー、彼女作ったん!?」
西「んだよ。俺に彼女できたら悪いかよ。」
與「いや、あの女嫌いのにっしーに彼女かっていう驚きと、彼女は可愛そうやろうなっていう複雑な気持ちが入り混じって驚きに変わったというか…。」
西「いやもう何言ってんのかわかんねーし笑」
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