変化

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変化

その日は特に変わったこともなく、僕は家に帰ってきた。 その夜、テレビを見ているとあるニュースが入ってきた。 「特集のコーナーです。今日の特集は新しい給与体系についてです。障害者差別解消法が施行され、様々な障害に対する関心が高まりました。そんな中、ある企業では障害を持った人の能力を活かそうと新しい給与体系を実施しています。」 この特集で取り上げられていた企業は僕が勤めている会社とも取引がある、某大手企業だった。 特集によると、その企業が実施している給与体系は能力別基本賃金制というらしい。その内容をまとめると、「障害者」「一般」双方の従業員に能力値測定試験というものを受けさせ、一人一人の能力を能力値という値で数値化する。その結果により従業員は最も自分の能力が活かせる部署に配属される。そしてその部署で最も重要視される能力の能力値に対応した固定賃金が従業員ごとに設定され、業績をあげれば、さらに賃金がそこに上乗せされる。 この制度の狙いは、能力の評価と固定賃金によって、従業員の自信とモチベーションを高めることで、従業員がより良い業績を上げるようになり、結果的に企業全体の業績が上がることらしい。 次の日、僕が出社すると部長から能力値測定試験を受けてから普段の仕事をするよう言われた。来月から僕の会社でも能力別基本賃金制を導入するらしい。あまりに急な決定に僕は少し違和感を感じていた。
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