おじさん

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南田が勤務中に音楽を聴いていることは知っていた。真夜中だし、最新のイヤホンはワイヤレスだから髪に隠れて見えないし、おれは特に注意をしたことがない。というか、10歳も歳が離れていると、今の世代はそういう常識なのかと受け入れてしまった。ただの諦めだ。 夜中のコンビニは、たまにスーツの酔っ払いや部屋着のカップルが入ってくるだけだった。 昼間でも、辺鄙な場所にあるから人の出入りは変わらない。 「南田くん、こんな深夜だけど今から新人が来て、奥で手続きするから、その間レジよろしくね」 「はい」 南田は前を向いたまま淡白な返事をした。 出入り口の安っぽい音楽が流れて、男性が1人入ってきた。灰色のスーツに身を包み、出っ張った腹がチョッキを押し上げてボタンが飛びそうだった。丸顔だが鼻筋はシュッと通っていて、細長いメガネが乗っている。 「こんばんは。今日からこちらで働かせていただきます。北谷です。深夜にすみません」 おじさんは頭の後ろに手をやって、首を突き出した。
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